カウンセリングのご依頼はこちらCRICK >臨床心理士によるオンラインカウンセリング/全国対応

優しくされても、苦しいのはなぜ?(前編)──宗教二世が抱える心のすれ違い


優しくされているのに、苦しくなる。

信仰家庭、過度に教育熱心な家庭、あるいは「いい子でいなさい」と
親のコントロールが強い家庭で育った人の中には、

「愛されてきたはずなのに、どこか満たされない」
そんな感覚を抱える人が少なくありません。

この記事では、そうした家庭で育った人に生まれやすい、
「愛されたいのに苦しい」心のメカニズムについて、
その背景を少しずつ紐解いていきます。


目次

「正しさ」や「信念」が“間”に入ることで、心がすれ違う

「正しさ」や「信念」が親子の“間”に入り込むと、
心がすれ違ってしまうことがあります。

親が子どもに愛情を伝えようとするとき、
それが「教育方針」や「理想像」という形で示されることは、
どの家庭にもあるものです。

「〜であるべき」「〜しなければならない」
そんな“正しさ”の基準は、家庭ごとにさまざまです。


信仰家庭で起こるすれ違い

信仰をもつ家庭では、そこに「神様」や「祈り」といった考えが加わります。

「神(や仏)が守ってくれる」「祈れば報われる」「信仰こそ正しい道」

そんな言葉に導かれながら、子どもは日々を過ごします。

けれども、たとえば——


うまくいったときには「信仰のおかげ」、
うまくいかなかったときには「信仰が足りない」と言われたら、
子どもはどんな気持ちになるでしょうか。


「お母さん、私を見て」

子どもがほんとうに見てほしいのは、
「信仰心」でも「理想の子」でもなく、
いつだって、ありのままの“自分”そのものです。

「お母さん、私を見て。」
「私の声を聞いて。」
「私の気持ちに気づいてほしい。」
「認めてほしい。」

そんな小さなサインを出しても、
返ってくるのが「祈りましょう」「信仰していれば大丈夫」
という言葉だったとしたら——

その瞬間、子どもの心の声は空気の中に溶けて、
親の後ろにある“何ものか”に吸い込まれていくように感じるかもしれません。

心の声は抱かれないまま、空へと消えていってしまう。

サインを出しても、親の理想像や揺ぎない価値観で返される。


そんな体験が積み重なると、子どもはいつしか、
「どうせ私の声は届かない」と感じるようになります。


「正しさ」が、親の心の余白を奪う

親自身が“信じる何か”や“理想の親”に心を委ねすぎると、
子どもの感情をそのまま抱きとめる余白がなくなってしまいます。

「悲しいね」「腹が立つね」と共に感じるよりも、
「そんなこと言っちゃだめ」「もっと感謝しなさい」
と、心の痛みを“なかったこと”にしてしまう関わり方になるのです。

それは、悪意ではなく、
親自身が「正しさ」に支えられないと不安でいられなかったからかもしれません。


成功しても自信が持てず、失敗すれば罪悪感がつのる

挑戦や努力は、本来なら成長の糧になるものです。


けれども、結果の多くが“信仰の正しさ”に結びつけられ過ぎてしまうと、
「自分の力で生きている感覚」が育ちにくくなります。

成功しても、「教えのおかげ」とされれば、
自分の努力を誇ることができない。
失敗すれば、「信仰が足りない」と責められ、
罪悪感がつのってしまう。

やがて、自分自身の努力や選択の意味さえ、
“誰かの意味づけ”や”評価”に左右されるようになっていってしまうのです。


信仰が支えになるとき、そして境界が必要なとき

もちろん、天災や病など、人の力の及ばない出来事の中で、
悲しみや無力さに打ちひしがれたとき、
信仰が希望を与えてくれることもあります。

それは、人の歴史の中で、
生きるうえで大切な支えのひとつになってきたのだと思います。

けれども、日常の中で“正しさ”として多用されてしまうと、
本来の心の育ちがゆがめられてしまうことがあります。

「正しさ」に頼ることと、「心の声に寄り添うこと」は、
ときに、まったく異なるものです。

信仰や理想像などの“正しさ”に強く囚われすぎると、
目の前の現実や、そこにある痛み・矛盾に
目を向けることが難しくなってしまうことがあります。

苦しみの原因を、例えば「信仰が足りない」といったような教義による解釈などで片づけてしまうと、
現実を見つめ、助けを求める力が育たなくなってしまうのではないでしょうか。

信仰が人を支えることもあれば、
その“正しさ”が、人の現実やありのままの心を覆い隠してしまうこともある。

その境界を、ときには見つめ直すことが、
「心の回復」につながっていくのかもしれません。


▶︎ 後編では、「不安に蓋をする心のくせ」や「理想化」のメカニズム、
 “愛されたいのに苦しい”心をどうほどいていけるかを見ていきます。
  後編はこちら→ 優しくされても、苦しいのはなぜ?(後編)──不安と理想化の心をほどいていく

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次