カウンセリングにどんなイメージがありますか。
とにかく話をきいてくれるところといったイメージの方が、大半かもしれません。
では、話をきいてくれるというのでは、家族や友達や先生やお医者さんに話すのと何が違うの?
と思うかもしれません。
ここでは、カウンセリングのどんな要素が効果につながっているのかについて、
少しみていきたいと思います。
カウンセリングを受けてみたいな、どうやって選んだらいいのかな、
受けている、あるいは、受けようとしているカウンセリングは自分に合っているのかな、
そんな疑問をお持ちの方にも参考になればと思います。
カウンセラー側の要因
心理的な問題を適切に理解していること
巷にはたくさんのカウンセラーや、カウンセリングの技法が溢れています。
資格のある方、資格がないけれど自分の体験から知識を得てカウンセラーをされている方、技法も様々です。
私は、資格のあるないに関わらず、
目の前のクライエントさんが困っている問題を適切に理解できること、見立てられることが、
カウンセラーにとってとても大切なことだと思います。
資格はなくとも自分の乗り越えた体験がある場合、それが得意分野になり、その分野においては、
知識や技法は多くあり、効果的な介入ができるかもしれない。
けれど、盲点も大きいかもしれない。
様々な資格をとってたくさんの知識を身につけたり、いろんな事例を経験してきていれば、
その経験から、本質的な問題を導き出しやすくなるかもしれない。
けれども、カウンセラー自身が、自分の問題と向き合ったり乗り越えたりした体験が少しもなければ、
カウンセラー自身という道具を使っていくことに対する盲点が増えたり、
技法だけに頼ったどこか人間味に乏しい介入になるかもしれない。
心理的な問題には、
複合的にさまざまな問題が絡み合っていることも多くあります。
元々の性格や特性の問題、家族の問題、依存などの生活習慣の問題、過去のトラウマ、
年齢や今現在の環境などの要因も。
クライエントさんのニーズを聞いて汲み取りながら、セッションでは、
今、何に一番取り組むべきか、焦点を当てるべきかの判断や介入が求められます。
ここが肝で、カウンセラーが常に研鑽を続けなければいけないところでもあるし、
カウンセラー自身の個性や価値観、自分との付き合い方が現れるところでもあります。
お医者さんでも、肺炎なのに、風邪薬だけで様子を見ましょうとか、
生活習慣が根本原因なのに、薬だけ漫然と出し続けるというのは、
よくないですよね。
クライエントさんのニーズ、根本原因と考えられる問題、
今取り組むべきこと、今は取り組まない方がよいこと、取り組む必要のないこと、
これらのカウンセラーの理解や、
クライエントさんと共に目指しているゴールがずれていると、
効果が出なかったり、逆に悪化したり、
いたずらに時間やお金を浪費していくことになります。
心の動きや変化をしっかりと捉えていること
そして、身近な人に話したりするのと違う大きなもう一つは、
特に専門的な学びを深めてきているカウンセラーは、
クライエントさんの態度や感情や思考の動きなどを丁寧に追っていく、
感じとっていくトレーニングを受けているということ。
身体感覚を扱うカウンセラーであれば、非言語的な要素も理解につなげています。
言葉では表しにくいことがらが、表情や手振りや身振り、
姿勢や呼吸でも現れることがあります。
一瞬一瞬の動きに寄り添いながら、ともにいる、揺れ動く、
そして、時には変化を促す、というように。
なかには、カウンセリングは、とにかくたくさん話したほうが回復に繋がるのでは
といったイメージを持たれてカウンセリングに訪れる方もいますが、
とにかく話せばいいというのではなく、
クライエントさんの状態によっては、
あえて話をしすぎないことが大切なこともあります。
そして、カウンセラーはクライエントさんが知らないことを
すでにすべて知っているかのような、
専門家としての上から目線のポジションや
特定の理論や技法を一方的に当てはめるようなやりとりをするのではなく、
大切なことは、クライエントさん自身が一番よく知っている、
クライエントさんの中から変化への芽、兆し、鍵は生まれてくるという
オープンな姿勢でいることがとても大事だと思います。
そのようなカウンセラーの態度からくる、クライエントさんとの関係性の中から、
カウンセリングの効果が生まれていきます。
日常生活での対応についても一緒に考えられること
カウンセリングがどのような頻度であっても、
習い事と同じで、そのときだけ取り組むのと、
日常で自分で何かに取り組んでいくのとでは、
大きな効果の差が生まれてきます。
私は小さい頃から楽器をやってきていたので、
レッスンだけだと全然上手くならない、
日頃の練習が大事というのは、身に染みていました。
スポーツとかも、練習が本番とかよく言われますよね。
やっぱり人が何か変化していく成長していくというのは、
一足飛びにはいかない、段階やプロセスが大事ということなのだと思います。
本当は日常的に取り組んで、
セッションでのやりとりや心の無意識で起こっている動きが、
自然と自分というものに馴染んでいくのが一番いいことでもあって、
伝統的な精神分析だと週に4回がスタンダードだったりします。
それだけ、人は、考え方を変える、感じ方を変える、習慣を変える
というのは、時間もかかるし、根気もいるし、抵抗も大きいし、
すぐに忘れ去って、元に戻ってしまうものなんですよね。
とは言え、週に4回のセッションとかは、
多くの一般的な現代人の生活や経済状況にはそぐわない。
じゃあ週に1回とか、2週間に1回のカウンセリングだと、
効果がないのかということでもなくて、
そのときに大切な視点が、
カウンセリングを受けていない日の日常で
どんなふうに自分と向き合うかということの、
ヒント、手がかり、やり方を
カウンセラーが一緒に考えるということ。
長らく心理の仕事をしてきて、
私の後悔は、恥ずかしながら、
このような視点を重視できずにいたことです。
クライエントさんの変化にとても大きく関わってくることなのに・・・
もちろん、自分で日常で何かやってみるということが難しい状況であれば、
まずそこから一緒に考えていく、取り組んでいくことも大切です。
クライエント側の要因
カウンセラーと「一緒に」という視点をもつこと
そもそも、「一緒に」ということ自体が、
これまでの家族や小さい頃の大人との関係から、わからないこともあったりします。
例えば、一方的に何かを決められたりして、ほとんど自由が許されなかった環境で育ってきていれば、
「一緒に」ということがどういうことなのかを体験したことがない。
スケートを滑ったことがなければ、
滑り方や身体のバランスのとり方が、全く想像もつかないみたいに。
けれども、やっぱり「一緒に」という意識は、大切です。
全てカウンセラーが解決してくれる、治してくれるという大きすぎる期待を持つと、
それは現実的ではないので、打ち砕かれてしまって、傷ついてしまう結果に。
カウンセラーも一人の人間なので、完璧な答えは持っておらず、試行錯誤もしています。
今日はこんなふうに感じた、もう少しこういうことも取り組んでみたい、
そんなクライエントさんの意見を大事にして、
カウンセラー自身も、自分の対応を柔軟に振り返っていくことができます。
例えば、育児中のママと子どもでは、よくあるやりとり。
「〜してみようか」「いやだ」
「じゃあどうしたい?」「こうしてみよう」「それだったらできる」
「本当はもっとこうしたい」「そしたら、次からは〜というふうにしてみようか」
そんな、伝え方や受け取り方をお互いにいろいろと工夫したり調整していける関係性が、
カウンセリングでも大事なんだと思います。
ある程度、オープンでいること、慌てない姿勢を持つこと
「ある程度」が大事。
そんなに、簡単に誰かにオープンになれるということや、
一気に自分が別人のようになるなんてことは、
世の中にないかもしれない。
一生懸命な方だと、カウンセリングで思うように話せない、気持ちを出しきれない、
すぐに変わってない、ということで、
逆に落ちこんでしまったりもあるかもしれない。
そんなときは、心配しなくても、大丈夫です!とお伝えしたい。
今日はこのくらい、ここに取り組めたかも、今日はうまく伝えられてないかも、
うまくいくときも、そうでないときもありながら、
些細な小さな積み重ねで、長い目で見て振り返ると、
大きな自分自身のあり方への気づきや変化につながっていっているということがあります。
映画のワンシーンのようなドラマチックな、何か1回のセッションで
火花が散るようなセラピストとクライエントの劇的な化学変化のようなものが起こって、
一瞬にして変容が起こる、そんなことは、
絶対にないとも言いきれないけれど、奇跡に近いと思います。
大きな一気に起こる変化は、逆戻りしやすいし、副作用も起こりやすい、
凝り固まってた肩を、ぐりぐりほぐしてもらったら、
次の日痛みが出て、かえってまた固まってつらくなった、
みたいなことに。
一見、地味で、なんの変化もないかのようなやりとりの積み重ねが、
少しずつ少しずつ、自分の心に染み渡っていく、変化へと向かっていく力になる、
カウンセリングとは、そんなイメージが近いのではないかと思います。
以上、カウンセリングの効果につながることを少し挙げてみました。
権威があるからとか、誰かに勧められたからとかではなくて、
あなたの問題を適切に理解し、寄り添ってくれる、問題解決につながる、
そんなカウンセラーを探すことが大事だと思います。
なんとなくいいなと感じる、あるいは、なぜだかわからないけど嫌な感じがする、
そんな相性や感覚も大事にしてみてください。
カウンセリングを受けてみようと思う際の、参考のひとつになれば幸いです。